「今月は養育費の振込があるから、少し節約したいんだ」
大好きな彼とのデート中、悪気なく放たれたその一言に、急に冷や水を浴びせられたような感覚に陥っていませんか?
それまで楽しく描いていた結婚生活のイメージに、突然「前妻」や「子供」というリアルな影が落ち、不安で胸が押しつぶされそうになる。その直感は、決して間違いではありません。
今、あなたが感じている不安の正体は、彼への愛情不足ではなく、「生活のリアリティ」への警戒心です。
ネットで検索すれば「バツイチ子持ちはやめとけ」という無責任な言葉が溢れています。しかし、あなたが知りたいのは、顔も見えない誰かの感情論ではなく、「私の彼の場合はどうなのか?」という具体的な答えはずです。
この記事では、感情論を一切抜きにします。代わりに「電卓」と「法律知識」を使って、あなたの未来を冷静に監査(チェック)します。
バツイチ男性との結婚における「許容できるリスク」と「即座に別れるべき損切りライン」の境界線を、明確な数値と基準で示しましょう。
「やめとけ」と言われる本当の理由。愛では補えない「3つの損失」
なぜ周囲やネットの声は、これほどまでに「バツイチ子持ち男性」との結婚を止めようとするのでしょうか。それは、結婚生活において「愛」という感情エネルギーでは決して補填できない、構造的な「3つの損失」が確実に発生するからです。
これらを直視せずに結婚することは、ブレーキの壊れた車で高速道路に乗るのと同じです。まずは敵を知りましょう。
1. 経済的損失(終わらない固定費)
彼が支払う養育費は、一時的な出費ではありません。子供が成人するまで、あるいは大学を卒業するまで続く、住宅ローン並みの巨大な固定費です。この支出は、あなたたちの新婚生活の可処分所得(自由に使えるお金)を確実に圧迫し続けます。
2. 法的損失(見えない権利者)
戸籍上、彼と前妻は他人になっても、法的には「父親」であり続けます。
特に重要なのが、将来彼が亡くなった時の「相続」です。前妻との子供には、あなたとの子供と同等の相続権があり、遺言書を書いても奪えない「遺留分」という強力な権利を持っています。つまり、あなたが彼と築いた財産の一部は、法的に前妻の子へ流れる運命にあるのです。
3. 心理的損失(免除されない継母役割)
「別居しているから関係ない」というのは幻想です。子供が病気になれば彼は駆けつける義務がありますし、面会交流で定期的に時間を取られます。結婚した瞬間から、あなたは「ステップファミリー(子連れ再婚家族)」の一員となり、見えない子供の存在を常に意識させられるストレスと戦うことになります。
【お金の現実】年収500万の彼は実質400万?「養育費算定表」で見る未来
ここからは分析官として、冷徹に数字の話をします。
あなたが結婚後の生活水準を正しくイメージするためには、彼の「額面年収」を見てはいけません。見るべきは、養育費を差し引いた「実質手取り額」です。
ここで登場するのが、家庭裁判所が公表している「養育費算定表」という重要エンティティです。これは、親の年収と子供の年齢・人数に基づいて、支払うべき養育費の相場を定めた基準表です。
年収500万円の彼氏のリアルな懐事情
例えば、あなたの彼が年収500万円(会社員)で、10歳の子供が1人いるケースをシミュレーションしてみましょう。
- 通常の手取り:
年収500万円の会社員の手取り額は、税金や社会保険料を引くと約390〜400万円です。月額にすると約33万円。 - 養育費の支払い:
「養育費算定表」に基づくと、年収500万円で子供1人(0-14歳)の場合、相場は月額4〜6万円です。ここでは間をとって月5万円とします。
年間では、5万円 × 12ヶ月 = 60万円の固定支出です。 - 実質手取り額:
ここが重要です。彼が実際に生活費として使えるお金は、
400万円(手取り) - 60万円(養育費) = 340万円
となります。
つまり、彼の生活力は「年収500万円の男性」ではなく、「年収400万円前半の男性」と同等なのです。この事実を知らずに「年収500万なら専業主婦になれるかも」などと計画すると、家計は一瞬で破綻します。
養育費は、子供が成人するまで、あるいは大学を卒業するまで続く長期間の支払義務です。再婚して新たな家庭を持ったとしても、原則として減額されることはありません。
出典: 平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究) – 裁判所
【過去の清算】「離婚協議書」を見せない男は地雷確定?3つのチェックポイント
数字の次は、彼の「誠実さ」を検証します。
ここで私が軍師としてあなたに授ける最強の武器は、「離婚協議書(または公正証書)」の確認です。
彼が「前の妻とは性格の不一致で別れた」と言っていたとしても、それを鵜呑みにしてはいけません。なぜなら、不貞行為やDV、借金といった致命的な事実は、戸籍には一切記載されないからです。
しかし、離婚協議書にはその痕跡が残ります。
口頭での説明ではなく、公的な書類を見せてもらうこと。これが、彼があなたに対して誠実であるかを見極める「踏み絵」となります。
確認すべき3つの「地雷」チェックポイント
彼に協議書を見せてもらったら、以下の3点を必ずチェックしてください。
| チェック項目 | ここを見るべき理由 | 危険なサイン(損切りライン) |
|---|---|---|
| 1. 慰謝料の有無 | 離婚の原因がどちらにあるかを推測する最重要の手がかりです。 | 彼が前妻に高額な慰謝料を払っている場合、彼に有責性(浮気、DVなど)があった可能性が極めて高いです。「性格の不一致」という言葉は嘘だったことになります。 |
| 2. 養育費の終了時期 | 「20歳まで」か「大学卒業まで」かで、総支払額が数百万円変わります。 | 記載が曖昧な場合、将来的に「大学費用も出してほしい」と追加請求され、揉めるリスクがあります。 |
| 3. 清算条項の有無 | 離婚時にお金の貸し借りを全て無しにしたかを確認する条項です。 | これがないと、離婚後何年も経ってから「あの時の財産分与が足りない」と前妻から請求される恐れがあります。 |
【覚悟の基準】幸せになれる女性、不幸になる女性の決定的な違い
ここまで、厳しい現実をお伝えしてきました。
「やっぱりバツイチ男性との結婚は無理なのかな…」と心が折れそうになっているかもしれません。
しかし、幸せな結婚生活を送っているカップルも確実に存在します。
数多くの相談を受けてきたメンターとして断言できるのは、幸せになれる女性と不幸になる女性の違いは、「リスクをゼロにしようとするか、コントロールしようとするか」という点にあります。
リスクをコントロールできる関係性とは?
不幸になる女性は、「愛があるから関係ない」とリスクから目を背け、問題が起きた時にパニックになります。
一方で、幸せになれる女性は、ここまで挙げたリスク(養育費による減収、相続問題など)を「解決すべき課題」として捉え、彼と二人で対策を練ることができます。
- 「実質手取りが少ない分、共働きを続けよう」
- 「相続で揉めないように、今のうちに生命保険で前妻の子への遺留分を用意しよう」
- 「家計は別財布にして、私の貯金は守ろう」
このように、不都合な真実について彼と腹を割って話し合い、具体的な対策(生命保険加入や婚前契約など)を実行に移せる関係が築けるのであれば、あなたは間違いなく幸せになれます。
逆に、あなたがこうした話を切り出した時に、「金の話ばかりするな」「なんとかなる」と対話を拒否する彼なら、その時こそが本当の「損切りライン」です。
よくある質問(FAQ)
最後に、よく受ける質問にお答えします。
Q. 彼が「前妻とはもう連絡を取らない」と言っていますが信じていいですか?
A. 信じてはいけません。
子供がいる以上、面会交流の日程調整や進学の相談などで、事務的な連絡は必ず発生します。法的に面会交流は子供の権利であり、親の都合で完全に断つことは困難です。「連絡を取らない」と約束させるのではなく、「連絡は業務連絡のみにし、内容は私にもオープンにする」というルールを作る方が現実的で健全です。
Q. 私との間に子供ができたら、前妻への養育費は減額できますか?
A. 可能性はありますが、自動的には減りません。
再婚して扶養家族(あなたや新しい子供)が増えた場合、家庭裁判所に「養育費減額調停」を申し立てることで、減額が認められるケースは多いです。しかし、これには彼自身が調停を起こす労力と、前妻との交渉が必要です。「面倒だから」と彼が動いてくれないケースも多いため、過度な期待は禁物です。
Q. 親に結婚を猛反対されています。どう説得すればいいですか?
A. 「感情」ではなく「数字と対策」でプレゼンしてください。
親御さんは、かわいい娘が苦労することを心配しています。「彼を愛しているの!」と泣いても火に油を注ぐだけです。「彼の手取りはこれだけで、生活費はこう分担する。相続対策として保険にも入る予定だ。リスク管理はできている」と、今日学んだ知識を使って論理的に説明してください。娘がそこまで現実を見ていると分かれば、親御さんの安心感も変わるはずです。
最後に。貴方の人生は、貴方が守るしかない
「養育費」という言葉に動揺したあなたは、とても聡明で、現実的な感覚を持った女性です。
その違和感に蓋をしないでください。疑うことは、愛がないことではありません。これからの長い人生を彼と共に歩むために、安全確認をする行為なのです。
まずは次回のデートで、勇気を出して「離婚協議書を見せて」と伝えてみましょう。
その一言が言えるかどうかが、あなたが「ただの都合のいい後妻」になるか、自らの手で幸せを掴み取る「賢いパートナー」になるかの分かれ道です。
あなたの決断が、後悔のない未来に繋がることを心から応援しています。
